歯医者の痛みが怖いあなたへ｜事前にできる対策と相談方法

歯医者に対して「痛い」「怖い」と感じることは、決して珍しいことではありません。
昔の治療で痛い思いをした経験がトラウマになり、大人になっても歯科医院から足が遠のいてしまう方は多くいらっしゃいます。

しかし、現在の歯科治療は進歩しており、痛みを最小限に抑える下記の工夫が凝らされています。

・注射の痛みを和らげる表面麻酔ジェル
・痛みを最小限にする極細の注射針
・一定の速度で注入する電動麻酔器
・削る音や振動が少ないレーザー治療
・不安を取り除く丁寧なカウンセリング

また、ご自身でできる工夫として、下記のような対策もあります。

・治療前に十分な睡眠をとり体調を万全にする
・痛みを感じたら我慢せず手をあげる
・治療前後のアルコール摂取を控える
・痛みが小さいうちに受診する
・不安や恐怖を理解してくれる歯医者を選ぶ

治療そのものが怖いと感じる方も、痛みの原因や対策を知ることで、不安を和らげることが可能です。

この記事では、痛みを減らすための歯科医院の取り組みや、ご自身でできる対策について解説します。

そもそも、なぜ歯医者の治療で痛みを感じるのか？

歯医者の治療でなぜ痛みを感じるのか、その理由を知ることで漠然とした恐怖は和らぎます。
治療の痛みといっても、原因は一つではありません。痛みの原因が何なのかを知ることが、対策を考える第一歩です。

歯を削るときの振動や音による不快感

歯を削る際に鳴り響く「キーン」という甲高い音や、頭に響くような振動は、多くの人が苦手と感じる要因の一つです。
過去に痛い思いをしながらこの音を聞いた経験があると、脳が音と痛みを結びつけて記憶してしまい、音を聞くだけで緊張や恐怖を感じてしまうことも少なくありません。

歯を削るという行為そのものへの恐怖心も、この不快感を増幅させます。

麻酔注射をするときのチクッとした痛み

治療中の痛みをなくすための麻酔注射ですが、その注射自体に痛みを感じて苦手意識を持つ方もいます。

注射の痛みには複数の原因が考えられます。

まず、注射針が歯茎の粘膜に刺さる瞬間の「チクッ」とした痛みがあります。

また、麻酔液を注入する際に生じる圧力も痛みの原因となり、特に頬の内側や歯茎の薄い部分は痛みを感じやすいです。

さらに、麻酔液の温度が体温と大きく異なると、刺激となって痛みを感じることがあります。

治療後に麻酔が切れてからのじんじんする痛み

治療中は麻酔が効いていて痛みを感じなくても、治療後、数時間経って麻酔が切れてくると痛みを感じることがあります。

これは、歯を削ったり神経に触れたりした刺激によって、歯やその周りの組織が軽い炎症を起こしているためです。

この痛みは、治療当日から翌日にかけて続くことが一般的ですが、多くの場合、歯科医院で処方される痛み止めを服用することでコントロールできます。

もし、処方された薬を飲んでも痛みが治まらない場合や、何日も痛みが続く場合は、我慢せずに治療を受けた歯科医院に相談しましょう。

【虫歯の進行度別】放置するほど痛みは強くなる

虫歯は放置して進行すればするほど、治療の際に痛みを感じやすくなります。

初期の虫歯は歯の表面のエナメル質が溶けているだけで、痛みを感じることはほとんどありません。

しかし、虫歯が象牙質まで進むと冷たいものがしみるようになり、さらに神経にまで達すると、何もしなくてもズキズキと激しく痛むようになります。

この段階になると、治療も複雑になり、麻酔が効きにくくなることもあります。

痛みが少ない初期段階で治療することが、結果的に心身の負担を最も軽くする選択となります。

痛みを減らすために歯医者が行っている5つの工夫

現在の歯科医療では、患者様が感じる痛みを最小限に抑えるため、様々な工夫が取り入れられています。

かつてのような「歯の治療は痛いもの」というイメージは、最新の技術や配慮によって変わりつつあります。

注射針の痛みを和らげる表面麻酔ジェル

麻酔注射の「チクッ」とする痛みが苦手な方のために、多くの歯科医院では表面麻酔を使用しています。

これは、注射を打つ部分の歯茎にあらかじめ塗布するタイプの麻酔薬で、ジェル状やスプレー状のものが一般的です。

表面麻酔を塗ってから数分待つと、歯茎の表面の感覚が麻痺し、注射針が刺さるときの痛みを大幅に軽減できます。

痛みに配慮している歯科医院では標準的に行われている処置なので、不安な方は事前に確認してみるとよいでしょう。

刺す痛みを最小限にする極細の注射針

注射の痛みは、使用する針の太さによって大きく変わります。

現在の歯科治療で使われている麻酔の注射針は、技術の進歩により非常に細いものが開発されており、その太さは一般的に採血などで使われる針よりも細くなっています。

前述の表面麻酔とこの極細の注射針を組み合わせることで、麻酔注射の痛みは最小限に抑えられます。

痛みに最大限配慮している歯科医院では、常に最も細いクラスの針を用意していることが多いです。

一定の速度で注入できる電動麻酔器の使用

麻酔液を注入する際の圧力も、痛みを感じる原因の一つです。

人の手で注射器を押す場合、どうしても力の入り方にムラが生じ、急に強い圧力がかかると痛みを感じやすくなります。

この問題を解決するのが電動麻酔器です。

電動麻酔器は、コンピューター制御によって麻酔液をゆっくりと一定の速度で注入することができます。
見た目は少し大げさな機械に見えるかもしれませんが、痛みを和らげるためには非常に有効な装置です。

削る音や振動が少ないレーザー治療

歯を削る「キーン」という音や振動が苦手な方にとって、レーザー治療は有効な選択肢の一つです。

レーザー治療は、特殊な光を照射して虫歯の部分だけを取り除く治療法で、従来のドリルのような回転器具を使いません。

そのため、不快な音や振動がほとんどなく、精神的なストレスを大幅に軽減できます。

また、痛みが少ないため、初期の虫歯など症例によっては麻酔を使わずに治療できることもあります。

治療への不安を取り除く丁寧なカウンセリング

痛みの感じ方は、精神的な状態に大きく左右されます。

「これから何をされるのか分からない」という不安や恐怖心は、痛みを実際よりも強く感じさせてしまうことがあります。

そのため、治療を始める前の丁寧なカウンセリングが非常に重要です。

信頼できる歯科医師は、患者様の不安な気持ちに耳を傾け、現在の口の中の状態や、これから行う治療の内容、手順、考えられる痛みについて、分かりやすく説明してくれます。

歯医者に行く前に自分でできる痛みを和らげる対策

歯科医院での工夫に加えて、患者様自身が事前に準備することで、治療の痛みを和らげることができます。

歯科医院は治療のプロですが、患者様の体調や感じ方までは完全には分かりません。

そのため、自分自身の状態を整え、適切に意思を伝えることが重要になります。

治療の前日は十分な睡眠をとり体調を万全にする

治療当日の体調は、痛みの感じ方に直接影響します。

睡眠不足や疲労が溜まっている状態では自律神経が乱れ、痛みに対して普段よりも敏感になり、同じ刺激であっても痛みの感じ方が大きく異なります。

また、体調が悪いと治療に対する不安や緊張感も高まりやすくなります。

歯科治療の予約を入れたら、少なくともその前日は夜更かしを避け、十分な睡眠時間を確保するように心がけましょう。

痛みを感じたら我慢せずに手を挙げて合図する

治療中に痛みを感じた場合、「少しだから」と我慢してしまう方がいますが、これは避けるべきです。
ほとんどの歯科医院では、治療を始める前に「痛みを感じたら手を挙げてください」といった合図を決めてくれます。

少しでも痛みや違和感があれば、遠慮せずにすぐに手を挙げて知らせましょう。

治療前後のアルコール摂取は炎症を悪化させるため控える

治療の前後、特に当日のアルコール摂取は控えるようにしましょう。アルコールには血管を拡張させ、血行を促進する作用があります。

治療前に飲酒すると、治療中に出血しやすくなり、止血に時間がかかることがあります。

また、治療後に飲酒すると、治療によって炎症を起こしている部分の血流が良くなりすぎてしまい、痛みや腫れを増強させる原因となります。

これは抜歯などの外科処置に限らず、歯石を落とす超音波スケーラーを使った処置や、虫歯治療の後でも同様です。

痛みが小さいうちに受診して早期治療を心がける

歯医者の痛みを避けるための最も確実で効果的な方法は、症状が軽いうちに受診することです。

ごく初期の虫歯であれば、痛みを感じることはなく、削る量も最小限で済み、簡単な処置で治療が終わります。

しかし、これを放置して虫歯が神経に近づくほど、治療時の痛みは強くなり、麻酔も必要になります。

痛みや違和感といった自覚症状がなくても、定期的に歯科検診を受ける習慣をつけましょう。

痛みが苦手な人が知っておきたい歯医者の選び方

痛みに配慮した治療を受けるためには、歯科医院選びが非常に重要です。

どの歯科医院でも同じ治療が受けられるわけではなく、痛みに対する考え方や導入している設備は様々です。

例えば、公式サイトで「無痛治療」への取り組みを明記しているか、レントゲンなどの精密な検査に基づいた丁寧な説明を行っているか、といった点は重要な判断材料です。

また、実際に治療を受ける前に、しっかりと相談できる時間を設けてくれるかどうかも確認しましょう。

「無痛治療」への取り組みを公式サイトで確認する

痛みが苦手な方は、まず公式サイトで「無痛治療」や「痛みの少ない治療」といったキーワードを掲げているか確認してみましょう。

さらに、単に言葉だけでなく、そのために具体的にどのような取り組みを行っているかをチェックすることが重要です。
治療後も安心して通える関係を築けそうか、という視点で情報を確認しましょう。

治療方法について相談できる時間を設けているか

痛みへの配慮は、技術や設備だけで完結するものではありません。
治療を始める前に、カウンセリングや相談のための時間を十分に確保している歯科医院を選ぶことをお勧めします。

「痛みが怖い」「過去にこんな経験があった」といった患者様の話にしっかりと耳を傾けてくれるかどうかがポイントです。

複数の治療法の選択肢を提示し、それぞれの利点や欠点を説明した上で、患者様が納得できる方法を一緒に探してくれる医院であれば、信頼して治療を任せることができるでしょう。

実際に通院した人の口コミや評判を参考にする

公式サイトの情報に加えて、実際にその歯科医院に通院したことがある人の口コミや評判も、医院選びの貴重な判断材料になります。

インターネットの口コミサイトやGoogleマップのレビューなどを見ると、「先生やスタッフの対応が丁寧だった」「治療前の説明が分かりやすかった」「本当に痛みが少なかった」といったリアルな感想を知ることができます。

ただし、口コミはあくまで個人の感想であり、感じ方には個人差がある点も理解しておく必要があります。

まとめ

歯の治療に対する痛みや恐怖心は、歯科医院側の様々な工夫と患者様自身の対策によって和らげることが可能です。

現在の歯科治療では、表面麻酔や電動麻酔器、レーザー治療など、痛みを最小限に抑えるための技術が広く導入されています。

また、治療前日に体調を整え、治療中に痛みを感じたら我慢せずに伝えるといった自己対策も有効です。

最も重要なのは、痛みが少ない初期段階で治療を受けることです。

そのためには、公式サイトや口コミを参考に、痛みの軽減に積極的に取り組み、丁寧にカウンセリングを行ってくれる歯科医院を選んで、定期的な検診を受けることが推奨されます。